コラム

知らずに大量に食べている?!ネオニコチノイド系農薬の人間へのリスクと日本の現状

食の安全に注目度が高まっている中、野菜やお米、果物などに使われている農薬が気になっているという方はいませんか?日本は農薬大国とも言われており、とくにその中でも問題視されているのが「ネオニコチノイド系農薬」です。

ネオニコチノイド系農薬は、未来を託すことになる子供達や取り巻く生態系にまで影響を与える危険性があるにもかかわらず、ほとんどの日本人が知らず知らずに口にしています。いまは大丈夫であっても、何十年後に自分の健康に害をもたすかもしれない…と考えると怖いですよね?

正しい知識を持つことはあなた自身や大切な人を守ることにも繋がります。そこで今回はそのネオニコチノイド系農薬の特徴と人体への影響、農薬から身を守るための方法をご紹介します。

ネオニコチノイド系農薬って何??

農薬にもさまざまな種類があり、ネオニコチノイド系はニコチンに似ていることから名前がついた農薬の種類です。
無農薬、減農薬など、日頃から食材を買うときに農薬に気をつけている方であれば、一度は聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、多くの日本人はネオニコチノイド系農薬についてはほとんど知らないのが現状です。

ネオニコチノイド系農薬は1990年に安全性が問題視された有機リン系農薬に次いで作られました。ネオニコチノイド系は無味無臭無色であり、浸透性、残効性、神経毒性の3つが特に人体にとって悪影響をもたらします。

毎日私たちはネオニコチノイド系農薬を使った農作物を大量に消費していますが、実は子供の発達や大人の神経系の病気を引き起こすなどとの関連性が疑われているのです。しかも、ネオニコチノイドは植物内部にまで浸透するため、洗っても残留してしまうというタチの悪い性質であることも厄介です。

安全神話の裏に隠れたリスク

ネオニコチノイド系農薬は「人には悪影響が少ない」「散布回数を減らせる」「少量散布で効果持続」などのメリットがあるため、日本の農業に浸透してきました。しかし、それは都合の良い解釈であり、人体および生態系全体への影響が危険視されてきています。

まだ研究段階ではありますが、パーキンソン病やALSなどの神経系の難病、喘息などのアレルギー・免疫疾患といった病気が、現代において急増する理由の一つとしても疑われています。

日本はもはや農薬使用について各先進国から遅れをとっている状況です。EUでは2013年より一部のネオニコチノイド系農薬は使用を制限されていますが、日本ではまだ時代の流れに逆行してネオニコチノイド系農薬の使用が継続されています。

ミツバチの大量死は人類への警鐘?!

その警鐘を鳴らすかのように起きたのがミツバチの大量死です。ミツバチは野菜や果物の蜜を吸うときに、その花粉を運ぶ役目も果たしています。農作物を育てる上で欠かすことができないミツバチも、じつは農薬散布の被害者なのです。大量死については神経毒が原因で引き起こされたと考えられています。そして、その原因として強く疑われているのがネオニコチノイド系農薬です。ミツバチの大量死とネオニコチノイドとの関係性は論文レベルでも検証されています。
農薬の影響はミツバチの中だけの問題だけではなく、人間にもいずれ影響することが予想できます。私たち人間はこれを機に農薬の使用について考え直すことが必要なのです。

ネオニコチノイド系農薬の人体への影響

普段、何も気にせずに農薬が使われた野菜を食べていて、「今のところ何も影響がないから大丈夫」と思っている方は多いはずです。でも、その影響は数年後、数十年後に出てくるかもしれないと聞いたら少し怖くないでしょうか。
では、ネオニコチノイド系が人間に対してどのような害をもたらすのか、詳しく説明していきます。

神経の働きを撹乱させるリスク

注目すべきなのは「神経毒性」です。神経にダメージを与えるという恐ろしい作用があると考えられています。

ネオニコチノイドは、人間や昆虫の体内で神経伝達物質として働いているアセチルコリンという物質のはたらきを撹乱。アセチルコリンがアセチルコリン受容体にくっつくことで神経が興奮して情報が伝達されますが、ネオニコチノイドはその受容体に結合してしまうのです。ネオニコチノイドが余計にくっつくことで、神経が過剰に興奮して神経の働きに異常を来す可能性があります。アセチルコリンは末梢神経だけでなく、中枢神経にも存在するため、その作用は全身に影響する恐れもあるのです。

子供の発達への影響

ネオニコチノイド系農薬の哺乳類への影響はまだ不明なことも多いですが、一部の研究では生殖能力や子供の発達への悪影響も危惧されています。DNAの損傷や、ラットでは精子形成に異常が出ることも報告されています。

また、タバコのニコチンをはじめとするニコチン類は低濃度でも胎児などに影響を及ぼすことがわかっており、成人より影響を受けやすい可能性があると考えられています。

ネオニコチノイドだけでなく他の有機リン系農薬による影響もあるとすれば、複合的な健康被害が起きる可能性もあり、農薬全般に注意すべきとも言えるのです。

日本におけるネオニコチノイド系農薬の現状

国内のネオニコチノイド系農薬の一日摂取許容量(ADI)は、欧米並みの基準を設けていますが、残留基準はEUや米国に比べ極めて緩い規制にとどまっています。

農作物に多くの農薬が使われているのが現状で、諸外国と比べて緩いどころか、規制緩和の方向に向かっているのです。

さらに、野菜だけ気をつければよいかというと、日本では家庭で使う日用品にもネオニコチノイド系農薬が多く使われています。防虫剤として建材やガーデニング用品、シロアリ駆除剤、家庭用殺虫剤など、何気なく使っているものにも含まれているのです。シックハウス症候群との関連性も疑われているので、農薬や殺虫剤に頼りすぎないようにすることも今後の課題となるでしょう。

ネオニコチノイド系農薬から身を守ろう

今回はネオニコチノイド系農薬の危険性と日本における実態についてご紹介しました。理解は深まりましたか?

残念ながら日本で生活している限り、ネオニコチノイド系農薬を避けることは容易なことではありません。でも、消費者である私たちが正しい知識と目線で選択を変えていくことは、未来の農業を変えるきっかけとなるでしょう。小さなことですが、なるべく無農薬野菜や減農薬野菜、特別栽培のお米を買うなど、できることから始めていくことが大事です。わずかな毎日の積み重ねが、自分の健康を守り、家族や大切な人、そして生態系を守ることにも繋がっていくはずです。この記事を通して、農薬への理解が多少なりとも深まったならば幸いです。

参考資料:
・知らずに食べていませんか?ネオニコチノイド (水野玲子 編著)
・新農薬ネオニコチノイド系農薬のヒト・哺乳類への影響, 木村ら,
Jpn. J. Clin. Ecol. (Vol.21 No.1 2012)

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