コラム

もう化学肥料はいらない?!微生物の力を使った土づくりとは

野菜の味を決めるとも言われる「土づくり」。

土を作る上で欠かせないものは肥料ではなく、微生物です。

いま、持続可能な農業、環境に優しい農業への関心が高まる中で、微生物に着目した農業が注目を浴びています。

その一方で、農薬や化学肥料の普及により、現代の農業が微生物が住む環境を脅かしているという事実があることをご存知でしょうか?
微生物が住みづらい環境は、人間にとっても住みづらい世界です。

そこで今回は微生物がどれだけ農業に貢献しているのか、詳しくお話ししていきます

 微生物とは?

微生物とは?

微生物とは、顕微鏡でなければ見えないくらい小さな生き物のことです。

たとえば、細菌や酵母、カビ、ウイルス、微細藻類などがあります。

私たちが生きている地球には、非常に多くの種類の微生物が共存しています。

たとえば海水1ミリリットルにはおよそ数十万もの微生物が含まれています。

また、水田土壌1グラムにはおよそ数十億もの微生物がいるというのです。

人間よりも圧倒的に多くの数が地球上には住んでいて、それぞれが厳しい環境に耐え凌ぐように優れた性質を獲得しています。

土の中にはどんな微生物がいる?

細菌や線虫などの小動物やカビの仲間なども含めると、非常に多くの種類の微生物が土の中に暮らしています。

例えば、土の中には次のような微生物が共生関係を築きながら暮らしています。

  • 細菌(バクテリア)
  • 放線菌
  • 糸状菌
  • 藻類

微生物はある種の生存競争を常に繰り返しながらも、ときにはお互いに支え合いながら暮らしています。

たとえば、相手の微生物の生育を阻害する物質を生み出して、お互いに干渉しあうことで数のバランスを保ちます。

また、逆にお互いに助け合って、増減を繰り返しながら個体数や種類のバランスをとっている種類もいます。

このような絶妙な仕組みによって生存していることを「土壌多様性」といい、植物も多様な微生物によって支えられています。

人間の腸と同じく多様性が大事

人間の腸と同じく多様性が大事

この土壌多様性と同じようなことが、じつは人間の中にも見られます。

ご存知のとおり腸内には非常に多くの種類の菌が住んでいて、腸内フローラを構築しています。

腸内フローラはお花畑に由来しているとおり、さまざまな種類の菌がバランスよく多様性を維持しています。

土も同じでさまざまな菌がお互いにバランスを保っていることが理想的。

しかし、このバランスを現代の農業では農薬散布などによって壊されてしまっているのです。

 土の中の微生物の役目

土の中の微生物の役目

細菌やウイルス、虫というとネガティブな印象を持つ方が多いのではないでしょうか。
でも実際は逆で、農業において微生物は想像以上の働きをしてくれている欠かせない存在です。

植物に養分を供給する

微生物の仕事は主に「有機物の分解」です。

植物も、動物も死んだら有機物になり、土に還っていきます。

もし死骸がそのまま地球上に残っていたら、地球上は死骸で埋め尽くされてしまうでしょう。

しかし、現実には動物の死骸も、枯れた植物も地球上からきれいに消えていなくなります。

それは微生物が存在しているからです。

死骸や枯れた植物、糞や尿なども、有機物を微生物がエサとして食べて分解し、最終的に二酸化炭素と水に変えてくれています。
繊毛虫のような小さな微生物は細菌をエサして分解するなど、微生物たちもお互いに食物連鎖の関係でつながっています。

微生物が分解したものは植物の養分になります。

農作物の成長に必要な「窒素」も、微生物がいないと生み出すことができません。

微生物が養分を作り出し、それを吸い上げて植物は成長しているのです。

連作障害を防ぐ

連作障害を防ぐ

連作障害においても微生物が大きく関わっています。

連作障害とは同じ土壌で何度も同じ農作物を育てることで、生産量が現象する現象のことです。

連作障害の原因となる「土壌」の質の悪化には微生物が良くも悪くも大きく関わっています。

植物は栄養を吸収するだけでなく、土中に特定の物質を放出して微生物に栄養を供給しています。
しかし、植物が出す特定の物質が土壌に溜まりすぎると、それを好む微生物ばかりが増えてしまい、生態系のバランスが崩れて農作物が病気にかかってしまうのです。

豊富な土壌生物が暮らしていれば、栄養の循環が良くなるため、連作障害も起こりづらくなります。

多種多様な微生物が住んでいるだけでなく、さまざまな植物が栽培されていることも必要にになります。

植物を病気から守る

「枯れた農作物や動物の死骸、排泄物などが分解されて、植物の養分になる」

この循環がうまくできている土壌環境では、農作物も病気にかかりにくくなります。

しかし、土壌生物が少ないと植物に害を与える病気や害虫が繁殖しやすくなってしまいます。
また、微生物には植物と共生して、植物を病気から守ってくれるエンドファイドという種類が存在します。

植物が病気にかかるとそれに対抗するする物質を生成して守ってくれる微生物です。

植物と微生物はお互いに栄養を与え合い、ときには病気を防ぐ役目も微生物は担っているのです。

 微生物が住みにくい現代の土壌環境

微生物が住みにくい現代の土壌環境

近年では植物の生育に欠かせない微生物が、住みづらい生育環境に追い込まれています。

化学肥料や農薬が微生物の仕事を奪ってしまったからです。

現代の農業では、ある特定の効果を期待するために化学肥料を用いた農業が普及しています。
化学肥料とは、有機物ではなくミネラルなど有効な成分そのものを含んだ肥料です。

化学肥料は微生物のエサになりません。

有機物を分解するという仕事が無くなった微生物は、だんだんと土から去ってしまい、次第に微生物がいない不自然な環境に変わってしまいます。

ある調査によれば、微生物がほとんどゼロに近い農地が少なくないとも言われています。

さらに、土壌消毒も問題です。

土壌消毒を行った結果、悪い菌や害虫だけでなく、必要な微生物や小さな虫さえも死んでしまい、土壌多様性が失われつつあります。

化学肥料が生んだ農業の矛盾

化学肥料が生んだ農業の矛盾

化学肥料は農作物だけでなく、人体にも悪影響を与える可能性があります。
化学肥料の中でも、最もよく使われているのが「窒素」の補給を目的とする肥料です。

窒素の豊富な化学肥料を大量に与えすぎると、過剰な窒素分は植物に「亜硝酸性窒素」として蓄積されます。

この亜硝酸性窒素は肉類のタンパク質と食べ合わせた場合、ニトロソアミンという発がん性物質に変わることが危険視されています。

また、窒素分が多いとえぐみが強く、美味しくない野菜に育ってしまうという問題もあります。

さらに、亜硝酸性窒素が多い野菜は虫食いされやすい傾向があります。

虫を殺すために農薬を使わざるを得なくなるという負のスパイラルに陥ってしまうわけです。

逆に言えば、化学肥料を使わなければ農薬を使う量も減らすことができます。

そのためにも、化学肥料に頼らずに微生物が豊富に含まれた土づくりを行うことが大切なのです。

 化学肥料に頼らない微生物と共存する農業に注目

化学肥料に頼らない

人間は農業の近代化に伴い、化学肥料を大量に使い、余計に虫が好むような野菜を作り上げて、農薬漬けにしてしまうという矛盾を引き起こしてしまいました。

農薬は削減の方向にあるとはいえ、まだ各国と比べると日本は農薬の使用量が多いといわれてます。
そんな中で、一部の農業関係者の間では、微生物の力を生かした農業が注目されて始めています。

研究者たちによって、微生物の活性に必要な条件は、栄養源である炭素と窒素のバランスであることも分かってきました。

このバランスを最適化するために必要な有機肥料や堆肥などを適切に導入することで、化学肥料に頼らずに微生物の力を生かした農業が可能だと言われています。

微生物の力を最大限に生かした農業が、これからもっと盛んになれば農薬や化学肥料の使用量も減らすことができるのではないでしょうか。

かけがえのない微生物の生命を守ろう

かけがえのない微生物の生命を守ろう

私たちは食べ物を食べることで生命を維持していますが、植物や動物から命をいただいていることを忘れてはいけません。

目に見えないほど小さな存在の微生物ですが、彼らの存在はかけがえのないものです。

利便性や美味しさだけを追求する現代の農業において、微生物の存在は軽視されていると言っても良いでしょう。

しかし、持続可能な農業を考えたときには、もっと微生物が生きやすい環境を整えること、余計に自然に手を加えないことの方が大事なのではないでしょうか。
例えば、微生物の力を生かした、無農薬野菜を選ぶことも私たちができることの一つです。

ぜひこの機会に、毎日食べる野菜の選び方から考えてみてください。

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