野菜を食べるときに、どれだけ農薬が残っているか気にしたことはありますか?
ふだん口にしている野菜や果物ですが、実は驚くほど多くの農薬を使って育てられています。
しかし、その情報は店頭では消費者側には伝えられず、どれほど農薬が使われているか、どのくらいの残留農薬があるのかを知ることは難しくなっています。
でも、農薬が大量に使われているということは、それだけ農薬が残っている可能性があるということ。
実際にどれくらいの農薬が使われているのか、その実態についてお話していきます。
Contents
残留農薬とは?
よく耳にする「残留農薬」という言葉。
目に見えないだけに怖い存在ですよね。
残留農薬とは農薬を使用した結果、作物に残った農薬のことをいいます。
そもそも農薬は、作物の虫食いを防ぐため、雑草を枯らすため、病気を防ぐために使用されるものです。
日本は高温多湿な気候の影響もあって、農業において農薬は欠かせないものとなっています。
農薬はじつは散布してすぐに消えるわけではなく、収穫後、出荷後にも作物に残ります。
そして残った農薬が作物を通して、また家畜の飼料として使われたりすることで、私たちの体にも入ってきます。
残留農薬は基準値以内であれば安全か?!
残留農薬は決して野放しになっているわけではなく、国が定めた基準により管理されています。
農薬それぞれにどの程度の毒性があるのかを動物実験などで確認し、どのくらい残るのかもチェックされています。
それならば安心と思われるかもしれませんが、じつは日本の残留農薬基準は諸外国と比べると緩い設定となっています。
現在よく使われているネオニコチノイド系農薬のアセタミプリドの基準値はかつて非常に高くなっており、厳しくするよう改正されました。
しかし、それでも依然として米国と比べた1-25倍、EUと比べると1.5-300倍も高くなっています。
日本の農薬使用量が諸外国と比べると非常に高いため、残留農薬基準を下げることが難しくなっているのです。
日本は世界から農薬大国と思われている?!
日本は安全な国、とよく言われていますが、じつは農薬については例外です。
むしろ海外からは「日本は農薬大国」とさえ思われてしまっているのです。
農薬使用量のデータ(2013年)によれば中国、韓国についで日本は世界3位。
世界有数の農薬大国といわれても仕方がない状況です。
EUでは残留農薬の規制が厳しくなっている一方、日本では規制緩和の動きさえ見られています。
厚生労働省では2013年1月に日本各地でミツバチ被害をもたらしたクロチアニジンの残留農薬基準を緩和しました。
たとえば、ホウレンソウでは3ppm→40ppmへ、カブの葉は0.02ppm→40ppmに2000倍も引き上げられたのです。
このホウレンソウ40ppmという値は、子どもが1.5株(40g)食べたら急性中毒を引き起こすリスクがあるとされているほど、高い基準値になります。
野菜の農薬使用回数ってどのくらい?
農薬が多く使われているといわれても、目で見ることも臭いで感じることもほとんど不可能です。
しかし、見えないものこそ怖いと思いませんか?
一体、日本の野菜には、どれくらい農薬が使われているのでしょうか。
日本の農薬散布はこんなに多い
農薬を使うといっても1回、2回、あっても数回程度だろうと思っている方が多いかと思います。
でも、じつは本当は桁違いに多く使われているのです。
次の表はある地域の農産物防除暦の一例です。
散布回数は農薬成分ごとの回数で、1日あたり殺菌剤1回、殺虫剤1回散布すれば2回とカウントされます。
なんと驚くことに、ナスで74回、かぼちゃで68回、ピーマン62回、トマト62回と想像以上に農薬が多く散布されています。
しかし、実際にどれくらいの回数、どんな種類の農薬が使われたかは消費者である私たちには知らされません。
食品に原材料表示やアレルギー物質の情報があるように、農作物についてももっと情報開示されても良いのではないでしょうか。
いちごの農薬散布回数
日本の農業が誇るフルーツといえば「いちご」ではないでしょうか。
日本のいちごはとても美しくて、味も大変美味しいため海外からも人気があります。
しかし、美しいいちごを育てる裏側には、非常に大量な農薬が使われています。
ある地域の防除暦によれば、殺菌剤37回、殺虫剤45回、合計で82回もの農薬が散布されます。。
そして作物に対してだけではなく、土壌の殺菌にも薬品が用いられます。
出荷してからも虫に食われることないよう、収穫前日まで農薬を散布することができます。
私たちの口に入るときにも、農薬がある程度残っていてもおかしくはありません。
無色透明で洗っても落ちない農薬
かつての農薬は散布すると白くなったり、農薬が撒かれたことが分かりました。
しかし、最近主に使われているネオニコチノイド系農薬は無色透明で臭いもありません。
それどころか、農薬は表面に留まらず植物の内側まで浸透してしまいます。つまり、洗っても農薬を除去しきれないのです。
日本の農作物におけるアセタミプリドの残留農薬基準は、米国、EUと比べて桁違いに多くなっています。
また、日本では新しいネオニコチノイド系だけではなく、有機リン系、ピレスロイド系、いまだに土壌汚染が残っている有機塩素系など多数の農薬に晒されています。
農薬散布の増加を食い止めるには?
日本ではキレイで形の整った野菜、果物が好まれます。
形が悪いものは売れない、少しでも傷があると売れないのです。
そして、その消費者の購買行動が、農業を大きく変えてしまいました。
結果的に、農薬散布の回数が増えて、残留農薬の影響を避けられない状況に陥っています。
近年では気候変動も大きくなり、ますます農家さんたちは苦労を強いられている状況です。
今後も日照りや雨に強い品種を作るためにも、品種改良や、農薬散布、化学肥料の使用は避けられなくなってくるかもしれません。
しかし、健康への影響や自然環境破壊のことを考えると、決して良い方向ではないと言えるでしょう。
農薬散布の現状を正していくためにも、私たち買い手側がもっと厳しい目線を持っていくことが求められます。
無農薬を選んで農薬のリスクから身を守ろう
では私たちがいまできること、始められることは何かというと、選ぶ野菜を変えるということです。
農薬散布の影響を回避するために、比較的簡単に始められるのが無農薬野菜です。
ご自身で育てることができる方はぜひチャレンジしてみてください。
それが難しい場合にも、ファーマーズマーケットや道の駅で探すと近くの農家さんが育てた野菜が手に入るはずです。
無農薬野菜はネット販売も行われているので、特定の農家さんを応援するという意味でもお取り寄せされると良いかもしれません。
その場合はその農家さんのこだわり、農薬散布の基準など調べておくと安心です。
ぜひ、ご自身が取り入れやすい方法で、無農薬野菜を少しずつ始めてみてくださいね。