コラム

農薬ってなに?知っておきたい農薬の種類と効果の違い

「農薬」というと、虫を殺したり、病気を防いだりするための薬品と思われがちですが、じつは他にもさまざまな種類があります。成長をコントロールするための薬品、さらには微生物を使った生物農薬もあります。その農薬の種類によって危険性もさまざま。漠然と怖がるのではなく、農薬の種類について正しく理解を深めておくことが大切です。

そこで今回は農薬の種類や分類、またその危険性についてもご紹介します。農薬についての基礎知識をここで確認しておきましょう。

農薬の定義とは

農薬とは

農作物の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう

と「農薬取締法」により定義されています。

農作物の病気や害虫を防除するために用いられる虫などの「天敵」も農薬に含まれます。農薬というと、農作物を育てるときに使う薬品というイメージがありますが、農作物を守り育てるために必要な資材も全てまとめて農薬に含まれます。

農薬は農薬取締法で管理されている

農薬は誰もが好き勝手に、好きな量を自由に使ってよいものではありません。法律により、その種類や使用上限が定められています。残留性が高く人に対する毒性が強い農薬は販売が禁止されています。そのため、国の考えでは日本で流通している野菜に使われる農薬は安全であるとされています。ただし、使用後に危険性が明らかとなることも多いため、農林水産省では農薬の使用量や残留農薬など実態はモニタリングされています。

農薬の分類

農薬はその有効成分の違い、用途の違い、剤形の違いによって、いくつかに分類することができます。主な分類について見ていきましょう。

有効成分による分類

農薬にはいわゆる「化合物」が主体となっている「化学農薬」と、生物由来の「生物農薬」の2つに大きく分けることができます。

化学農薬は、化学的に合成された物質や天然物等を有効成分とする農業用薬剤です。人工的に合成されたものだけではなく、天然植物から抽出された成分を用いたものも化学農薬に含まれます。20世紀前半までは天然物や無機物が農薬の中心でしたが、第二次世界大戦後になると世界的に化学合成農薬が発展したといいます。

一方、生物農薬は、名前のとおり生き物を使った農薬です。「寄生バチ」や「テントウムシ」、「カブリダニ類」などの虫、またウイルスや菌などを使った微生物剤があります。環境にやさしい農薬ということで、最近では生物農薬の研究開発も進められているようです。

用途・目的による分類

また、次に用途による分類では「病害虫から守るための農薬」と「成長調整のために用いる農薬」に分けることができます。

病気や害虫から農作物を守る農薬

農薬散布

農林水産省では用途別に、7種類に分類されています。たとえば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、誘引剤などがあります。殺虫剤はいわゆる害虫を殺すためのもの、殺菌剤は病気の原因菌を殺すため、除草剤は雑草を殺すためのものです。殺ダニ剤、殺線虫剤は殺虫剤に含められ、殺虫剤にも化学農薬と生物農薬があります。

植物は栽培途中にさまざまな虫や病原体によって侵襲されます。虫食いにあったり、ひどいときには壊滅的な被害になることもあります。収穫量が減れば農家にとっては大きな痛手となり、市場にも出回りにくくなり価格高騰などに繋がるので、多くの農家さんは農薬を使わずにはいられないのです。

成長調整に用いる農薬

農薬と言うと、何か悪いものを殺す、防ぐというイメージがありますが、成長を調整するために使う薬剤も農薬の一種です。発根促進剤や着果促進剤などの「植物成長調整剤」がこれに当たります。

有名なところでは、種無しブドウを育てるために用いられる「ジベレリン」という植物ホルモン剤が「植物成長調整剤」に含まれます。安全という前提で用いられていますが、一部の動物実験では安全性を否定する意見も出ています。

剤形による分類

さらに農薬は形で分けることができます。剤形というのは、製剤の形状・形態のことです。水に薄めて使うものもあれば、粒剤、粉剤、油剤などそのまま使うタイプもあります。

水で薄めて使うタイプにも液状、顆粒状、固形のものがあります。粉状のタイプは袋を開けるときに粉が舞うため、安全面から近年では減ってきています。畑の農薬散布を観察すると、液状のものをノズルから放出して散布している様子を見ることがあります。

これは薄めた液体を散布している場合が多く、広範囲に散布できるというメリットがあります。しかし、周辺にも不用意に散布してしまう危険性があることから、限られた範囲のみ散布するよう工夫が施されています。ただ、実際には農薬散布による事故は毎年数件程度の報告があり、中には死亡例も含まれています。

日本の農薬散布は世界的に見ても多い

農薬国別使用量

近年では、食の安全への関心が高まるとともに、農薬があらためて問題視され始めています。農薬は虫だけではなく私たち人間にとっても悪影響を及ぼし、さまざまな病気の原因として疑われ始めたのです。実際に農薬使用による影響が否定できない健康被害の報告も相次いでおり、世界的に農薬使用は規制が厳しくなってきています。

しかし、残念ながら日本では一定の規制はされているとはいえ、諸外国と比べると非常に使用量が多くなっています。日本の高温多湿な気候が関係しているため、安定的に農作物を収穫するため使わざるを得ないという意見もあります。しかし、果たして本当に必要なだけ使っているかというと、それは疑問に思うところがあります。

日本では2013年に規制を緩和する方向でクロチアニジンの残留農薬基準を引き上げました。これは世界と逆行する動きであり、決して見過ごしてはいけない流れです。厳しい規制があるとは言えない今、私たちは個人レベルで農薬から身を守らなければならなくなってきています。

農薬による健康被害の実態

農薬が原因でなる病気

農薬は怖いものとは知っていても、野菜を食べて具合が悪くなったという経験をされた人はほとんどいないでしょう。しかし、だからといって安全とは言い切れません。実際に因果関係が否定できない事例が相次いで報告されています。
では、農薬は人体にとってどんな悪影響があるのでしょうか?

神経系への悪影響

近年よく使われているネオニコチノイド系農薬は、ニコチンと似た構造を持っており、神経のはたらきを狂わせる作用があると言われています。ネオニコチノイドはアセチルコリンという神経伝達物質の作用を撹乱させるのです。ネオニコチノイドがあることで、本来はスイッチが入るべきでない神経のスイッチが入ったままになってしまい神経の異常興奮を起こします。

哺乳類に対しては昆虫のように受容体にはネオニコチノイドが結合しないという意見もあり、たしかに昆虫が死ぬような濃度では人間は死にません。しかし、実際には中毒事例が報告されています。また、パーキンソンやアルツハイマーなどの神経系疾患、内分泌疾患や免疫疾患にも影響すると疑われています。

子供の発達への影響

身体が発育途中である子供は、大人に比べるとより影響を受けやすくなります。近年、増加の傾向にある発達障害は、農薬使用量の増加と関連するように増えているといいます。他にも次にあげるような農薬による悪影響が考えられています。

・知能レベルの低下
・学習障害
・自閉症
・ADHD
・作業記憶障害
・アレルギー, 喘息
・先天異常

必ずしも農薬だけが原因と断定しづらいものも含まれますが、農薬や化学物質が関与している可能性が指摘されています。今後ますます、農薬の危険性については注視していくべきだと言えるでしょう。

野菜の安全にもっと目を向けてみよう

野菜を食べることは、生きるためであり、健康のためです。農薬はその野菜を安定供給するために用いられているものですが、決して安全とは言い切れない状況があることも確かです。

農薬について特に気にしていなかったという方も、これを機会にぜひ野菜を選ぶ目線を変えてみてください。無農薬、減農薬、有機栽培など、さまざまな選択肢が増えてきています。

あなたが投じる一票が、きっとその農家さんを応援することに繋がり、よりベターな栽培方法の普及にもつながるはずです。安全な野菜がもっと増えるよう、ぜひ今日から行動を変えていきましょう。

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